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【源氏物語 末摘花 三分割 ③】
口々に責められて、紫の紙の、年経にければ 灰おくれ古めいたるに、手はさすがに 文字強う、中さだの筋にて、上下等しく書いたまへり。見るかひなううち置きたまふ
いかに思ふらむと思ひやるも、安からず
「 かかることを、悔しなどは言ふにやあらむ。さりとていかがはせむ。我は、さりとも、心長く見果ててむ」と、思しなす御心を知らねば、かしこにはいみじうぞ嘆いたまひける
大臣、夜に入りてまかでたまふに、引かれたてまつりて、大殿におはしましぬ。行幸のことを興ありと思ほして、君たち集りて、のたまひ、おのおの舞ども習ひたまふを、そのころのことにて過ぎゆく
ものの音ども、常よりも耳かしかましくて、かたがたいどみつつ、例の御遊びならず、大篳篥、尺八の笛などの大声を吹き上げつつ、太鼓をさへ高欄のもとにまろばし寄せて、手づからうち鳴らし、遊びおはさうず
御いとまなきやうにて、せちに思す所ばかりにこそ、盗まはれたまへれ 、かのわたりには、いとおぼつかなくて、秋暮れ果てぬ。なほ頼み来しかひなくて過ぎゆく
       

#金木犀の香り #たちまちづき #立待月 #中秋の名月 #和歌 #noh #能楽

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【源氏物語 末摘花 三分割 ②】
事ども多く定めらるる日にて、内裏にさぶらひ暮らしたまひつ。
かしこには、文をだにと、いとほしく思し出でて、夕つ方ぞありける。雨降り出でて、ところせくもあるに、笠宿りせむと、はた、思されずやありけむ。かしこには、待つほど過ぎて、命婦も、「いといとほしき御さまかな」と、心憂く思ひけり。正身は、御心のうちに恥づかしう思ひたまひて、今朝の御文の暮れぬれど、なかなか、 咎とも思ひわきたまはざりけり。
 「 夕霧の晴るるけしきもまだ見ぬにいぶせさそふる宵の雨かな雲間待ち出でむほど、いかに心もとなう」
とあり。おはしますまじき御けしきを、人びと胸つぶれて思へど、
「 なほ、聞こえさせたまへ」
と、そそのかしあへれど、 いとど思ひ乱れたまへるほどにて、え型のやうにも続けたまはねば、「 夜更けぬ」とて、侍従ぞ、例の教へきこゆる。
「 晴れぬ夜の月待つ里を思ひやれ 同じ心に眺めせずとも」

                

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【源氏物語 末摘花 三分割 ①】
 二条院におはして、うち臥したまひても、「 なほ思ふにかなひがたき世にこそ」と、思しつづけて、 軽らかならぬ人の 御ほどを、心苦しとぞ思しける。思ひ乱れておはするに、頭中将おはして、
「 こよなき御朝寝かな。ゆゑあらむかしとこそ、思ひたまへらるれ」
と言へば、起き上がりたまひて
「 心やすき独り寝の床にて、ゆるびにけりや。内裏よりか」
とのたまへば
「 しか。まかではべるままなり。 朱雀院の行幸、 今日なむ、楽人、舞人定めらるべきよし、昨夜うけたまはりしを、大臣にも伝へ申さむとてなむ、まかではべる。やがて帰り参りぬべうはべり」
と、いそがしげなれば
「 さらば、もろともに 」
とて、御粥、強飯召して、 客人にも参りたまひて、 引き続けたれど、一つにたてまつりて
「 なほ、いとねぶたげなり」
と、とがめ出でつつ
「 隠いたまふこと多かり」
とぞ、恨みきこえたまふ
                

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新撰和歌六帖(新撰六帖題和歌)  
寛元二年内(1243年)
五人の詠者の内、為家の試作開始が最も早く(寛元元年十一月十三日)、試作終功が最も遅いのが蓮情で(寛元二年六月二十七日)

新撰和歌六帖第一:歳時
新撰和歌六帖第一:天
新撰和歌六帖第二:山
新撰和歌六帖第二:田
新撰和歌六帖第二:野
新撰和歌六帖第二:都
新撰和歌六帖第二:田舎
新撰和歌六帖第二:宅
新撰和歌六帖第二:人
新撰和歌六帖第二:仏事
新撰和歌六帖第三:水
新撰和歌六帖第四:恋
新撰和歌六帖第四:祝
新撰和歌六帖第四:別
新撰和歌六帖第五:雑思
新撰和歌六帖第五:服飾
新撰和歌六帖第五:色
新撰和歌六帖第五:錦綾
新撰和歌六帖第六:草
新撰和歌六帖第六:虫
新撰和歌六帖第六:木
新撰和歌六帖第六:鳥 
                                

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