『休館日の彼女たち』八木詠美
…まさに表紙絵に使われているマグリットのような、シュールレアリスム的な物語です。非現実度においては、著者の前作『空芯手帳』をも上回っており、他ではなかなか味わえないような面白さがありました。そもそも古代の石像とラテン語で会話すること自体がぶっ飛んだ設定なのに、言葉の一部が欠落する下宿の大家とか、冷凍倉庫に籠もる仕事とか、ちょっとずつ変なものが重なって来て、いつの間にか読み手である自分もそこに巻き込まれてしまう、何とも不思議な感覚です。会話言語としては滅亡したラテン語での会話文にイタリック体が使われている事も、映画の字幕を読むような独特の効果を生み出していました。
終盤で主人公が、脱ぐことのできないレインコート(どこか鉄仮面伝説を想起させる)から逃れて飛び立とうとする様子は、それまでの薄曇りの風景から一転して、四月の晴れた空そのもので、あまりにも鮮やかな場面転換でした。
[2023/07/22 #読書 #休館日の彼女たち #八木詠美 #筑摩書房 ]
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