桂にかけたる綾の鼓。
なるものか/\うちて見給へ。
うてや打てやと責鼓。よせ拍子とう/\うち給へ/\とて。
しもとをふり上げ責め奉れば。鼓はならでかなしや悲しやと。
叫びまします女御の御声。あらさてこりやさてこりや。
冥途の刹鬼あおう羅刹。/\の。呵責もかくやらんと。
身を責め骨を砕く呵責の責といふとも。これにはまさらじ恐ろしやさてなにと。
なるべき因果ぞや。
因果歴然はまのあたり。
歴然は目のあたり。知らたり白波の池の。ほとりの桂木にかけし鼓の時もわかず。
うち弱り心つきて。池水に身を投げて。波の藻屑と沈みし身の。
程もなく死霊となつて。女御に憑き祟つて。しもとも波も。
打ちたゝく池の氷のとう/\は。風わたり雨落ちて。紅蓮大紅蓮となつて。
身の毛もよだつ波の上に。鯉魚が踊る悪蛇となつて。
まことに冥途の鬼といふともかくやと思ひしら浪の。
あら恨めしや恨めしや。あら恨めしや。恨めしの女御やとて。
恋の淵にぞ。入りにける。
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