『夜が明ける』西加奈子
亡き父の影響で映画好きだった主人公は、高校の級友があるフィンランド映画の俳優に似ていることに気付き、それをきっかけに彼と親しくなります。それまでクラスで浮いた存在だった彼は、自身の言動をその俳優になぞらえることで、人気者になるのです。卒業後、主人公は大学で苦学の末に念願のマスコミの世界に入ったものの、各種ハラスメント常習の職場で消耗して行きます。一方の級友は、舞台俳優を目指し何とか前衛劇団に入ったものの、苦節の果てに辞めさせられ、やがて夜の街に拾われます。こうして夢破れた両人はそれぞれ、落ちる所まで落ちて行くのでした。
何とも言い難い程に、凄まじい小説でした。文面から始終、混沌とした熱気のようなものが強烈に放射されている感じです。人間の暗部や社会の歪みが、これでもかと言う位に濃密に押し込まれています。
男女差別、容姿差別、社会的格差による差別等々、世の中は理不尽な差別やハラスメントに満ち溢れていて、それは私自身を含め恐らくは多くの人が…

[2023/02/18 #読書 #夜が明ける #西加奈子 #新潮社 ]
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