「敷地物狂」が金春禅竹が創作した謡曲であるとされる。舞台は加賀江沼郡菅生の菅生石部神社の境内(敷地)である。主人公は菅生殿の子息、幼くして比叡山に登り出家する。その後、僧として故郷の菅生へ帰るが家はなく、両親の消息すらつかめない。敷地の宮の境内でみずぼらしい姿の老婆が説法を聞きに来る。老婆は息子が書き残した手紙を読み上げ、母であると判り再会を果たす。
まだ春寒き旅の空
まだ春寒き旅の空
越路にいざや帰らん
これは比叡山より出たる法師にて候
またこれに御座候ふおん方は
加賀の国菅生殿の御子息にて御座候ふが
比叡山におん上りあって学問の奥義を極め給い候
また故郷をご覧ぜられたきよし仰せ候ふほどに
ただ今おん供申し加賀の国すがわの里にと急ぎ候
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