ちなみに附言しておけば,精神医学者や心理学者 - かつての土居健郎や河合隼雄のような - が現実の社会問題に対して語る批評的言辞を鵜呑みにするのは禁物です。こうした論者は往々にして,社会万般が人間心理の観点から合理的に理解可能だと考える心理主義の弊に陥りやすい。
社会心理学者エーリッヒ・フロムは『自由からの逃走』の中で,ナチズムの精神史的起源をルター,カルヴァンの宗教改革に求めてその心理的基盤を分析していますが,論述に先立って次のように注意しています。
《宗教的教義や政治的原理の心理的意味を研究するとき,まず第一に心にとめなければならないのは,心理学的分析はその原理の真理性についての判断は含まないということである。この真理性の問題は,問題それ自身の論理的構成という面からだけ決定することができる。ある原理や思想の背後にひそむ心理的動機の分析は,その原理の妥当性や,その原理のもっている価値についての合理的判断にかわることはできない》 (日高六郎訳)
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