『朱色の化身』塩田武士
1956年に福井の温泉街で発生した大火災の、不穏な描写で幕が開きます。すると唐突に時は過ぎて2020年、ある行方不明の女性についての、様々な人物による証言集へと移って行きます。やがてこれらの証言は、元新聞記者である主人公によるインタヴューで、病床にある父の依頼によってある女性の消息を辿って関係者を取材していることが判明します。更に次々と証言が連なるに従って、探している女性の決して容易ではない遍歴が、じわじわと明らかになって来るのでした。
一人の女性の半世紀を超える半生を、彼女と関わり合った人々の証言から浮かび上がらせる構成です。登場人物はすこぶる多く、まず巻頭に「登場人物紹介」としてか22名が列挙されているのですが、そこにも載っていない名前が早くも冒頭から続々と出で来るのです。最初の頃は、誰に着目して読み進めるべきなのか分からなかったです。
彼女について証言する人々は、それぞれ彼女をほんの一断面から垣間見ているに過ぎません。それらを積み重ね…
[2023/02/13 #読書 #朱色の化身 #塩田武士 #講談社 ]
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