#死が三人を分かつまで
ある女性の重婚をテーマに、テキサスとメキシコという地球の反対側を舞台に語られる物語なのですが、背景にある底のない不況、大震災、そして解消されないジェンダーギャップは全く他所ごとではなく身につまされる。
「私はただみんなを愛しただけ」という重婚は、当然ながら結果的には取り返しのつかないダメージを周囲に負わせる。しかしそこには思慮深くて愚か、愛情深くて残酷な、矛盾に満ちた太古の女神みたいな女性像が垣間見えるようでもある。
重婚なんてあり得ないとしか思ったことがなかったけれど、「自分を知りたい、私を知って欲しい」というヒロインのモノローグは、「自分を取り戻せ」という彼女の全ての娘たちに向けたメッセージとして、様々なことを考えさせられる。
ミステリの形を借りて最後まで読ませる(聴かせる)大作でありました。