沖縄の美術といえば、陶芸や染織などの伝統工芸がまず注目され、絵画や彫刻などは見落とされがちかもしれません。
今年(2023)の新刊「沖縄美術論 境界の表現 1872-2022」は、そんな沖縄の近代以降の絵画・彫刻・写真・映像・パフォーマンスなどを取り上げ論じた、読み応えある美術論集。
*
Ⅰ章では明治から現代までの沖縄の歴史をたどりつつ、大きな社会の変化と共に、沖縄の近代美術が生まれ歩んできた道を、作家・作品の紹介も交えて解説。
Ⅱ章は、前章にも登場する沖縄の近・現代アーティスト24名の作家論。
それぞれのプロフィールや作品論をより詳細に展開します。
*
著者は、沖縄県立博物館・美術館の元副館長・翁長直樹氏。
5年の歳月をかけたという本書は、本論の熱量の高さはもちろん、充実した用語解説や年表からも、労作だった事が伺えます。
沖縄の美術に対する目を大きく開かせてくれる、まさに画期的な一冊です。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #美術論 #沖縄美術 #沖縄タイムス社 #翁長直樹 #境界の表現 #沖縄美術論

Last updated 2 years ago

新刊「沖縄の生活史」(石原昌家・岸政彦 監修)入荷しました。
沖縄を生きる市井の人々が語った、自らのライフストーリー。
語り手100人に対し、それぞれ100人の聞き手が掘り起こした濃密な人生が、2段組・850ページに凝縮されています。
この本の特徴は二つ。
*
一つは、聞き手がプロの調査員ではなく、語り手の身近な人である事。
その信頼関係ゆえに、語り手は地元の言葉を気兼ねなく使い、自由闊達に話しています。
また聞き手も自分の期待する答えを求めたり、話の流れを無理に操作しません。
横道に逸れた話から、大切な物語が始まる事もあるのです。
*
もう一つは、5cmを超える”厚み”。
手に取るたびに体積と重量を感じ、指でページをめくるたびに分厚い未読ページが僅かずつ既読ページへと移っていく。
それらがスマホの画面スクロールには無い刺激となり、この本に詰まっている100人の人生と、沖縄の歴史の重みを伝えてくれるような気がします。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #生活史 #みすず書房 #沖縄タイムス社 #岸政彦 #石原昌家 #沖縄の生活史

Last updated 2 years ago

沖縄の舞踊家・島袋光裕氏は、明治26(1893)年那覇生まれ。
沖縄芝居の役者・劇団長として、また琉球舞踊や組踊の家元として、戦前・戦後の沖縄芸能界を牽引したレジェンドです。
そんな島袋氏が、自らの半生を綴った本がこちら「石扇回想録」。
石扇(せきせん)とは氏の雅号です。
*
子どもの目で見た明治の”世替わり”、新聞記者・教師を経て飛び込んだ芝居の世界。
明治・大正の沖縄芝居の演目や名優達・劇団の思い出が生き生きと語られます。
また昭和の不況や戦時下の統制、戦後は焦土からの復興など大きな苦労が。
その後も芝居の斜陽化・舞踊研究所設立など、波乱万丈です。
*
明治から戦中・戦後を生き抜いた島袋氏のライフヒストリーであり、王朝時代から続く伝統芸能の軌跡であり、また演劇・舞踊論としても、実に読み応えある一冊。
芸能にかける氏の情熱と探究心が、行間から湧き立つように伝わり、読む者を圧倒します。
*


#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #組踊 #琉球舞踊 #沖縄芝居 #沖縄本 #沖縄タイムス社 #島袋光裕 #沖縄芸能物語 #石扇回想録

Last updated 2 years ago

人生の壁にぶつかった時、悩みや悲しみの渦中にある時、経験豊かな先輩の言葉に救われる事があります。
こちら「チルグヮーのむんならーし」は、大正生まれの喜納千鶴子さんが、沖縄の格言やことわざを教えてくれる本。
それは沖縄の先人達の知恵や発見であり、子や孫への心のこもったメッセージです。
*
チルグヮーとは”ツルちゃん”、むんならーしとは”物のならわし”という意味。
本書の教訓は、千鶴子さんがその母や祖母から口伝されたものだそう。
すなわち、明治や琉球王朝時代に生まれた考えや価値観でもあります。
それが時を超えて、現代の私たちを暖かく励まし、時には厳しく叱ってくれます。
*
巻末には、千鶴子さんの半生も紹介。
若い頃から大阪への出稼ぎ、帰郷後の沖縄戦、戦後も家計を助けるため商売に精を出し、7人の子どもを育てあげる…など、苦労を重ねながらも力強く生きてこられた千鶴子さん。
そのことばに耳を傾ければ、きっと勇気が湧いてくる事でしょう。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #むんならーし #沖縄タイムス社 #喜納千鶴子 #チルグヮーのむんならーし

Last updated 2 years ago

朝は雨模様でしたが、今(12:00)は晴れ間も見えてきた神戸です。
地元では今日からセンバツ高校野球が開催!
期待の沖縄尚学が早くも本日の第三試合に登場、ただし開始時間は予定より遅れて17:00からだそう。
それまでこちら「沖縄甲子園名勝負ファイル」を読んで心を落ち着かせます😊
*
これは、1958年夏の初出場・首里高校から2015年夏の興南高校まで、約60年に渡り沖縄の高校が甲子園で繰り広げた、44の名勝負を振り返る本。
1999年夏に初めて優勝した沖縄尚学が強豪PLを突破した準決勝、2010に春夏連覇を遂げた興南高校が報徳学園の5点リードを逆転した夏の準決勝などを解説。
*
沖縄が惜敗した試合も多く取り上げられ、それぞれのドラマが回想されます。
1950〜70年代に、初出場・初得点・初勝利・初のベスト4…と、様々な高校が一つずつ記録を塗り替え、99年夏に初優勝・2010年に春夏連覇までたどり着く沖縄の高校球児達の足跡。
振り返ると、歴史の重みを感じます。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #沖縄タイムス社 #沖縄甲子園名勝負ファイル

Last updated 2 years ago

「なはをんな一代記」(1977)は、明治〜昭和の激動の時代を生きた女性・金城芳子氏の回想記。
1902(明治35)年・那覇の辻に生まれ、20歳で上京後、民族学者・金城朝永氏と結婚。
養育院の保母長など児童福祉の仕事に30年あまり従事し、引退後も本土で働く沖縄出身者の支援活動に取り組みました。
*
彼女の人生は、平坦な道のりではありません。
妻のある男性を追っての上京と別れ、関東大震災での被災。
結婚後は不況の中で様々な職に就き、夫を支援。
養育院で活躍するも戦争が始まり、空襲で家を焼失…と、まさに波乱万丈です。
*
前半は昔の那覇・辻の懐かしい暮らしの様子が、中・後半は東京での困窮生活や福祉の仕事への情熱、各界の著名人との交流や支援活動の事などが、歯に絹着せぬ闊達な語り口で綴られます。
常に沖縄の事を心に留め、また女性の地位向上のため邁進した彼女の半生。
今こそ多くの人に読んでいただきたい一冊です。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #タイムス選書 #沖縄タイムス社 #金城芳子 #なはをんな一代記

Last updated 2 years ago

「タイムス選書」シリーズ(古書)、たくさん入荷しました。
沖縄タイムス社の企画で1975〜82年に15冊が刊行された書籍(その後90年からは第2シリーズも)。
いずれも第一線で活躍する沖縄の研究者や作家らが、地元の歴史や文化をテーマに筆を振るっています。
*
「山原の火」「逆流の中で」は、戦前戦後の沖縄の社会運動の記録。
「琉球文学論」は、おもろ・琉歌・組踊などの解説。
琉球〜沖縄の歴史を掘り下げてゆく「那覇変遷記」「新・沖縄史論」「沖縄歴史への視点」。
「古層の村 沖縄民俗文化論」は村落や漁村の形成、祭祀や拝所の成立を論じます。
*
沖縄学の研究者・外間守善が、沖縄学の父とされる伊波普猷を論じた「伊波普猷論」。
そして「なはをんな一代記」「なはわらべ行上記」は、戦前・戦後の那覇の暮らしを活写した自伝。
それぞれに個性的、かつ日本復帰後の熱を感じる名著です。
ぜひお手に取ってみてください。
*

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #沖縄タイムス社 #タイムス選書

Last updated 3 years ago

戦後、米軍統治下の沖縄に続々と建設された米軍基地。
こちら「基地で働く」は、当時その基地の中で働いていた沖縄の人々の証言集。
驚くのは、その仕事の多種多様さです。
例えば、基地建設の土木作業。
危険な火薬・毒物・アスベスト等を扱う兵器の製造・管理。
それだけではありません。
タイピスト・家政婦・軍人の子の通学バス運転手。
将校クラブのコックやボーイ・ウェイトレス。
米兵が遊ぶカジノやプールの整備員・アイスクリーム工場の工員。
ベトナム戦から帰ってきた血まみれの車両や不発弾の修理。
ベトナム戦用の謀略ビラの印刷。
CIAによる傍聴業務や、核施設での勤務。
さらに、山中でのゲリラ戦訓練のベトナム兵役まで。
人権侵害的な扱いや後遺症への補償も無い危険な作業が、平然と行われていた事に愕然とします。
そして日米どちらの国民でもない当時の沖縄の人々が、両国から皺寄せを受け、またアメリカの戦争遂行に都合良く使われていた事が見えてくるのです。

#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #沖縄本 #沖縄タイムス社 #沖縄タイムス中部支社編集部 #軍作業員の戦後 #基地で働く

Last updated 3 years ago

沖縄の古書には、外観は地味なのに内容がとても興味深く、驚く物があります。
こちら「私の戦後史 第6集」もその一つ。
沖縄の各界で活躍する方々10名が、自らの戦前~戦後の体験を語るものですが、語り手がみな錚々たるメンバー。
そして各自の個人史からは、沢山の発見や感動が。
*
例えば、琉球舞踊・組踊の大家・宮城能造氏。
戦前の軍国化による取締りや、死と隣り合わせの沖縄戦をくぐり抜け、芸能文化が何度も危機的状況になる中で、絶やさず芸を磨き劇団を運営、劇場や舞踊研究所も設立。
舞踊の復興と継承に心血を注ぐ姿に、胸を打たれます。
*
他に、戦後沖縄初のラジオ局を創立、文化復興に尽力した川平朝申氏(ジョン・カビラ氏の伯父)。
琉球絣織の功労者・大城カメ氏や、陶工・島常賀氏。
ひめゆり同窓会長などを務めた源ゆき子氏など。
語られる多くのドラマから、並々ならぬ復興の苦労や、沖縄の伝統と未来を担う使命感が伝わります。
*


#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #源ゆき子 #島常賀 #大城カメ #川平朝申 #宮城能造 #沖縄本 #戦後史 #沖縄タイムス社 #私の戦後史

Last updated 3 years ago

沖縄の古書には、外観は地味なのに内容がとても興味深く、驚く物があります。
こちら「私の戦後史 第6集」もその一つ。
沖縄の各界で活躍する方々10名が、自らの戦前~戦後の体験を語るものですが、語り手がみな錚々たるメンバー。
そして各自の個人史からは、沢山の発見や感動が。
*
例えば、琉球舞踊・組踊の大家・宮城能造氏。
戦前の軍国化による取締りや、死と隣り合わせの沖縄戦をくぐり抜け、芸能文化が何度も危機的状況になる中で、絶やさず芸を磨き劇団を運営、劇場や舞踊研究所も設立。
舞踊の復興と継承に心血を注ぐ姿に、胸を打たれます。
*
他に、戦後沖縄初のラジオ局を創立、文化復興に尽力した川平朝申氏(ジョン・カビラ氏の伯父)。
琉球絣織の功労者・大城カメ氏や、陶工・島常賀氏。
ひめゆり同窓会長などを務めた源ゆき子氏など。
語られる多くのドラマから、並々ならぬ復興の苦労や、沖縄の伝統と未来を担う使命感が伝わります。
*


#mameshobobooks #mameshobo #まめ書房 #源ゆき子 #島常賀 #大城カメ #川平朝申 #宮城能造 #沖縄本 #戦後史 #沖縄タイムス社 #私の戦後史

Last updated 3 years ago