#浪曲
(つづき)
奈々福「赤穂のいちばん長い日」
くしくも今日19日は、14日に起きた松の廊下の事件と浅野内匠頭切腹の一報が早駕籠でようやく赤穂城に伝えられた日とのこと。藩はお取りつぶしになり、ひと月で城を空けなければならなくなる。これほど慌ただしい一大事があるだろうか。にもかかわらず、殿中の事件や討ち入りとは違って、その間のことを描いた浪曲は伝えられていないらしい。ないならつくっちゃえ、ということで、奈々福師匠がつくった新作の浪曲。変に赤穂方を美化するのではなく、史実に基づいて、場内の混乱と紛糾(籠城派と開城派の対立)、大石内蔵助の苦悩と画策、城下の様子など、色々な視点をおりまぜてその怒涛の一か月を綴っていく。
なんといっても奈々福師匠の唄の力がまず本当に素晴らしい。しかも、キョン師もそうだけど、話をつくれる才能というのはすごいと思う。資料もたくさん読みこんだと言っていらした。まして浪曲の場合、筋書きを決めるのみならず、どこを語り、どこを唄い、どういう節で唄うのか、落語にはない要素もある。終盤、子供の手毬唄をはさんだのちに、最後に大石が城を去るくだりは胸にぐっと迫るものがあった。やっぱり奈々福師匠はかっこいいなあ。また是非とも聴きたい(そして今日も美舟さんの可愛らしさよ……)。(つづく)
#浪曲
2023年3月19日(日) 泉岳寺浪曲会へ
三門綾「中村仲蔵」(w/広沢美舟)
富士綾那「幽霊奇談」(w/沢村博喜)
~仲入り~
玉川奈々福「赤穂のいちばん長い日」
先日行った喬太郎×奈々福のコラボが素晴らしかったので、奈々福師匠お目当てに急遽予約。初めての泉岳寺。初めての浪曲だけの会。コアな浪曲ファンとおぼしき方々に囲まれ、すぐ外で浅野内匠頭・大石内蔵助をはじめとする赤穂事件の張本人たちが眠るなか、格別な感のあるとてもいい会だった。
綾「中村仲蔵」
落語でいうと二つ目さん当たるのだろうか。まだ初々しく、唄に関してはガンバレという感じだったけど、楽しい一席だった。さん喬師匠で落語の「中村仲蔵」を聴いたばかりだったのも何かの縁か。浪曲の中村仲蔵は大筋は一緒だけど、細かいところは落語と違っていて興味深かった。
綾那「幽霊奇談」
曲師の沢村博喜さん作とのこと。野ざらしのしゃれこうべを拾って供養してやった若夫婦。お礼に出てきた幽霊は、じつは品川の大店のドラ息子。家を飛び出し任侠三昧のあげくに喧嘩で首と胴が離れることに。やがて夫婦と幽霊は、窮地に立たされている幽霊の実家の大店を救うべく品川へ向かう……と、そのまま落語にもなりそうなじつに楽しく、痛快な一席だった。綾那師匠も可愛らしい。(つづく)
#落語 #浪曲
(つづき)
喬太郎「梅津忠兵衛」
初めて聴く噺だと思ったら、最後の最後に「小泉八雲作」と言っていて、ああなるほど、と。忙しいのにこのために覚えたのだろうか。それともときどき掛けていたのか。ともあれ、八雲ワールドの不思議な話は、とくに劇的なストーリー展開があるわけでも派手なアクションがあるわけでもないのに、ぴーんと糸を張り詰めたようにして客席を聴き入らせる話術はさすがだなと思った。「お若伊之助」にも通じるところが。
奈々福「鹿島の棒祭」
もう一席は古典を、ということで始まったが、唄い出しの「利根の川風たもとに入れて 月に棹さす高瀬舟」というフレーズはなんとなく聴いたことがある。浪曲って、たとえば「旅行けば駿河の国に茶の香り」みたいに、子供の頃にどこかで聴いたような文句がたくさんありそうだな。かっこいい一席だった。そして曲師の美舟さんの合いの手の可愛さったらもう。
ともあれ、このシリーズはずっと聴きたい。浪曲自体ももっと聴きたい。
#落語 #浪曲
(つづき)
奈々福「ものくさ太郎」
今回のお題が「日本の民話」だったということで、今日の新作浪曲は岩波文庫を底本とした「ものくさ太郎」。考えてみたら、ものぐさ太郎って名前は知っているけど、どういう筋なのかぜんぜん知らなかった。聞いてびっくりだよ、こんな話だったのかー。あとでキョン師が「まるで三遊亭白鳥の新作みたいな話だ」といっていたが、まさにそんな感じ(笑)。奈々福師はあえて浪曲ふうに翻案せず、民話をそのまま語るようにやってみたといっていたが、「○○にけり」「○○なり」みたいな語尾を混ぜたのがとてもおかしかった。また、盛り上がって唄に入るところなどは、急いで3日で仕上げたというだけあって、かっちり決まり切っていないスリリングな空気が曲師さんとのあいだに流れてジャズのセッションのようだった。とにかくあの声量のすごさったら。浪曲ってト書き付きのひとりミュージカル(プラスジャズ)みたい。(つづく)
#落語 #浪曲
2023年3月10日(金)「玉川奈々福 喬太郎アニさんにふられたいっ!」@紀尾井小ホールへ
浪曲 奈々福(w/美舟)「ものくさ太郎」
落語 喬太郎「梅津忠兵衛」(小泉八雲作)
~仲入り~
浪曲 奈々福(w/美舟)「天保水滸伝より 鹿島の棒祭」
喬太郎が事前に出したお題をもとに奈々福が毎回新作の浪曲を一席つくって披露し、また喬太郎がお題に関連する噺を一席語るという企画の第一弾。これまでは「喬太郎アニさんをうならせたいっ!」というシリーズを7回ばかりやって、今回からが新シリーズ。長い浪曲をしみじみ聴くのは初めてだったけど、暮れに末廣で見た奈々福師匠があまりにかっこよかった(そして美舟さんが可愛すぎた)のが忘れがたく、チケットを取ってみたが大正解。ものすごく面白かった。ここしばらくの仕事上の憂さが吹き飛んだ(けどうちに帰ってきたらまた戻ってきたw)(つづく)