集会が始まり、ヒトラーは演壇に上がった。800人のマルクス主義者が待ち受けていた。彼らは野次を浴びかけたが、1時間ほどは直接的な妨害行為に出ることは無かった。実は、この間に彼らはビールを何杯も飲み干し、その空ジョッキを隠し集めていたのである。

突然、騒ぎが起こった。ジョッキが投げつけられ椅子が振り上げられた。たちまち格闘が始まり、会場は荒れ狂った。護衛隊は血を浴びながらも勇敢に戦い、わずか20分の後にはマルクス主義者一味を隅に追い詰め、最後の一人まで叩き出したのである。

ヒトラーは何事も起こらなかったかのように平然と演説を再開した。この日以来、護衛隊はヒトラーから「突撃隊(Sturmabteilung、SA)」という名誉の呼び名を与えられ、その名にふさわしい勇猛果敢な部隊となった。

ミュンヘンではマルクス主義者はもはや、党集会への妨害活動を行えなくなった。
(ヤーコプ・ザール著「ナチス運動史」より)









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