然るに花の名高きは
まづ初花を急ぐなる。近衛殿の糸桜
見渡せば。柳桜をこき交ぜて。都は春の錦。燦爛たり
千本の桜を植ゑ置き其色を。所の名に見する。千本の花盛
雲路や雪に残るらん。毘沙門堂の花盛。四王天の栄花もこれにはいかで勝るべき
上なる黒谷下河原。むかし遍昭僧正の
浮世を厭ひし花頂山
鷲の御山の花の色。枯れにし。鶴の林まで思ひ知られてあはれなり
清水寺の地主の花松吹く風の音羽山。こゝはまた嵐山。戸無瀬に落つる。
滝つ波までも。花は大井河ゐせきに雪やかゝるらん
すはや数添ふ時の鼓
後夜の鐘の音。響きぞ添ふ
あら名残惜の夜遊やな
をしむべし/\。得難きは時。逢ひ難きは友なるべし
春宵一刻価千金。花に清香月に影。春の夜の
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