「空気」と「世間」
学生時代に初めて読んで感銘を受けた本
「空気を読め」という言い回しに代表される「空気」、そして「空気」と密接な関係にある「世間」という日本に特有の二つの概念について語る
「空気」は山本七平の、「世間」は阿部謹也の優れた先行研究があるが、本書は「世間」の特徴として「贈与・五週の関係」「長幼の序」「共通の時間意識」「差別的で排他的」「神秘性」というものを挙げ、世間が戦後の都市化・グローバル化により壊れ、一神教における神のような存在のない日本において「空気」が個人を支える役割を果たしていることを指摘している点が実に的確だった
「空気」は戦後の都市化やグローバル化によって壊れつつあった「世間」の「共同体の匂い」を残したものと位置付けられているが、SNS時代の現代も(だからこそ、かもしれない)、他者からどう見られるかを忘れてネットミームやジャーゴンを共有して内輪で盛り上がるような行為に「同じもの・同じ時間を共有する」心地良さを互いに感じたいという欲求が表れているように思った
#読了 #講談社現代新書 #kamikami読書録
今日はカノジョがいないから
ようやく1巻刊行以来ぶりに再読、そして最新3巻まで追いつくことができた
風羽子がゆにと七瀬の関係にあった脆弱性を突いてゆにを陥していく手練手管は、実に狡猾で恐ろしい
やっぱり「なんでもする」は禁句だよなあ
#読了 #Kamikami読書録
転生王女と天才令嬢の魔法革命
今冬放送されてハマったアニメの原作にあたる小説。
アニスをはじめとした登場人物の一人称視点でストーリーが進む。
1巻は世界観の解説や登場人物の顔見世をメインとしつつ、アニスのドラゴン討伐までを描く。
アニスがその型破りぶりとユフィへの信頼の厚さを、早い段階でスピーディーに示してくれるのがいい。
小説ではアニスが転生者だということを、ほぼ最初から本人がモノローグで語っていることには少し驚いた(そもそもタイトル自体がネタバレだが)。
これも早いところ続きを読みたい。
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雪解けとアガパンサス
王子様系女子と子犬系女子の恋を描いた百合漫画。
良くも悪くも畏敬の念を持たれて敬遠されがちなキャラが、先入観なく無邪気に慕ってくる相手に惹かれる展開は珍しくはないと思う。
だけど本作はそのへんの高揚感というかドキドキ感の演出が上手くて、思わず読んでいる自分もドキドキしてしまうような内容で心の中でニヤニヤが止まらなかった。
早いところ続きを読みたい。
#読了 #雪解けとアガパンサス #kamikami読書録
音のレガート
絶賛上映中の「響け!ユーフォニアム」アンサンブルコンテスト編に触発されて(?)読んだ。
主人公の美和音(みわ おと)ら5人の女子高生がアンサンブル部を結成してコンテストに挑むストーリー。
一般的な吹奏楽部の活動と異なり、少人数といえる5人で意見を出し合いながら一つのハーモニーを奏でていこうと試行錯誤する奥深さと面白さが伝わってくる内容だった。
一人一人のエピソードの掘り下げ方や周囲の大人たちとの関係の描き方も、程よくリアリティがあって個人的には好き。
「レガート」は「音と音を切らないように」「なめらかに」という音楽用語だが、確かに音の活動が5人を結び付けたように思える内容だった。
#読了 #音のレガート #kamikami読書録
情報を正しく選択するための認知バイアス事典
お前だって論法、認知的不協和、公正世界仮説といった人間の特性や思考の傾向から陥りやすい認知バイアスを取り上げ、解説した本。あの現象に名前があることを知るだけでも腑に落ちること、未然に防げる陥穽があることはある。
知っているものもあったけど、このあたりは勉強になった。
・仮面男の誤謬(置き換えの知識不足で生じる誤謬)
・常識推論(我々が日常生活で行なっている推論)
・賢馬ハンス効果(相手にとって望ましい答えを察して回答すること)
・基本的な帰属の誤り(他者の行動の原因を説明する際、その人の性格や能力を重視しすぎて、状況や環境などの要因を無視する)
・現状維持バイアス(変革する方が合理的でも、人は現状維持を選びがち)
余談だが、デマ、陰謀論、詭弁、差別、こういったものに全身どっぷり浸かっている人は「自分には関係ない」とか言いそうだし、この本を読んでも手遅れかもしれない……。
#読了 #情報を正しく選択するための認知バイアス事典 #kamikami読書録
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この恋を星には願わない
あらすじや帯の惹句からして儚く切ないお話
冬葵がある程度報われる展開になると思われるが、どのような形でどの程度報われるか予想がつかない
そういう意味で今後が楽しみ
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君たちはどう生きるか
宮崎駿監督の同名の映画を鑑賞する前に一読(と言いつつ買ったのはもう何年前やら)。
主人公のコペル君が身近な経験や叔父さんとのやり取りを通じて、人生において重要なことを学んでいく小説的な読本。
銀座のデパートの屋上から眺めた東京の人の多さやオーストラリアの粉ミルクから社会科学的な知見を身に付ける観点が教育的だし、何より叔父さんが若いのに学識も人格も出来すぎていて(いい意味で)印象深かった。丸山眞男氏が解説を書くだけのことはある。そして、叔父さんのような大人になりたいものだ。
また、1937年刊行という盧溝橋事件勃発の年で日中戦争の最中という時世に抗うかのように、外国との相互関係の重要性や世界中の人々との友好を訴えていたのは一縷の光明に見えた。
余談だけど、個人的にはナポレオン推しのかつ子さんがいいキャラしていると思った。本書は若き日の宮崎監督の愛読書だったらしいし、宮崎作品のヒロインに影響を与えたかも?
#kamikami読書録 #読了 #岩波文庫 #君たちはどう生きるか
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現代思想入門
難解という印象が付きまといがちな現代思想の解説書としては、タイトル通り非常にわかりやすい。
内容は「脱構築」をキーワードにデリダ、ドゥルーズ、フーコーの3人の思想を中心に解説したもの。
「脱構築」とは二項対立を留保することであり、秩序を強化する動きへの警戒心を持ち、秩序からズレるもの、すなわち差異に注目すること。
デリダのパロールとエクリチュールの対比、ドゥルーズのリゾームと逃走線、フーコーの狂気の隔離と「権力は下から来る」という言葉や概念に今後とも注目していきたい。
比較対象として久しぶりに内田樹『寝ながら学べる構造主義』もまた読んでみたいところ。
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「若者の読書離れ」というウソ
直近10年ほどの主に中高生の読書傾向についての統計をもとにに「若者の読書離れ」など世間一般のイメージとの乖離を暴く。
また同時にこの世代の読書にまつわる文化や、どんな本が読まれているのかを明らかにしている良著。著者はラノベの有識者らしい。
Youtuberの著書や人気のあるTiktokerが宣伝した本が売れるのは時代を感じさせるけど、文庫本ライトノベル市場の売上が半減(2012年284億円→2021年123億円)する一方で、児童書は少子化の中でも堅調に売上を伸ばしている(1998年700億円→2021年967億円)というのは意外だった。
中高生(ついでに言うなら日本人全世代)の読書数読書率も長年ほとんど変わっていないというのに、読書離れというイメージが先行しているのは興味深い。
親世代から教育や出版の関係者まで、若者と接することが多い人にはぜひ読んでほしい本だと思った。
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中原中也詩集
この前読んだ本で中原中也の詩が引用されていて、感じ入るところがあったので購入
「サーカス」「汚れつちまつた悲しみに……」は有名
気に入った詩は「秋の一日」「憔悴」「頑是ない歌」あたり
中也の詩は言葉選びとリズムが好き
#中原中也 #kamikami読書録 #読了